伝統芸能の拠点で老朽化のため昨年10月に閉場した国立劇場(東京都千代田区)の再整備計画が、見直されようとしている。民間の力を活用するPFI方式で2度入札を行ったが、資材の高騰などで事業者が決まらず、国費増額が迫られそうだ。
国立劇場は1966年に皇居前の隼町に開場した。歌舞伎公演が多い大劇場(1610席)や文楽用の設備がある小劇場(590席)を持つ。敷地には国立演芸場(300席)もある。歌舞伎や人形浄瑠璃文楽、邦楽など伝統芸能の公演や、その担い手の養成の場となってきた。民間では難しい上演がまれな作品の復活も手がけ、芸の継承に尽力してきた。
老朽化が進んだため劇場を運営する独立行政法人・日本芸術文化振興会(芸文振)は2016年、全面改修する計画を作成。20年には「文化観光拠点としての機能強化」を掲げて建て替えの方針へと転換した。民間の資金や経営力を生かすPFI方式を導入することとし、ホテルなどの併設を目指した。民間事業者はホテルやカフェなどを整備・運営し、土地の賃料を芸文振に払う仕組みだ。
関係者によると、入札にあたっては、国費をもとに800億円超の財源を用意。しかし全国的な建築資材の高騰や人材不足などが影響し、22、23年の入札では落札に至らなかった。再整備のめどが立たないなかで23年10月に国立劇場は閉場した。
「国の顔」としての劇場が建…